開催月日:2023年3月20日(月)13:30~15:30の予定(13:00~受付開始)
講師:鮫島員義さん(新ハイキングクラブ 前会長・埼玉支部支部長)
場所:板橋区ハイライフプラザ
定員:30名
受講料:700円(当日受付でお支払いください)
新ハイキングクラブ会員の高齢化に沿って、山岳だけでなく平地で自然に触れあえるハイキングコースの紹介は新ハイキングの使命の1つであると考えます。
特に新型コロナにより、足腰が弱ってしまった会員へ安心して歩けるコースの紹介は必須だと考え、その一つの具体例として紹介します。
人里近くだと、歴史あり、さまざまな興味深い古寺社を含めた施設が豊富にある。
それらを訪ね歩き、学ぶのも興味深く、楽しむことができることを紹介します。
講師の鮫島さんは新ハイキングクラブ前会長。現在は埼玉支部の支部長として「三木散歩」などの本部との合同山行を企画されています。「三木散歩」は原則第三木曜日に計画される、「大人の社会科見学」的な山行で、里山や郊外を目的地にその土地の歴史や文化、自然、産業などに思いを馳せながら歩く、毎回人気の企画です。
「三木散歩」は2022年12月にスタートしましたが、今、計画のある10回はさいたま市から川口市まで広がる、広大な「見沼田んぼ」を目的地に設定しています。1260ha,浜名湖の2倍の面積を持つ緑地、「見沼田んぼ」の成り立ちから講座はスタートしました。
鹿の角に例えられる形をした見沼田んぼは、その昔、奥東京湾でした。「縄文海進」と呼ばれるこの時期は今より平均気温が高く、海水面も高いため、海が陸地の奥まで入りこんでいたのです。その後の気候変動で海水面は下がりましたが、もともと海だった見沼田んぼは湿地の姿のまま、江戸期を迎えます。
一時はその地形を利用し、「八丁堤」という名のダムで農業用のため池(見沼溜井)として利用されていましたが、人口増加に対応するため、ため池の水を抜き、湿地を田んぼにすることで米の収穫を上げようと幕府は考えました。低地ですから、稲作には向いていますが、ため池をなくしてしまったので、農業用水の確保は必要となります。
そこで白羽の矢が当たったのが紀州の井澤弥壮惣兵衛為永。彼は、調査に2年をかけ、見沼溜井に「代わる」用水路を利根川から設置する計画を立てます。実際の工事は(田んぼに水がいらない)秋から春の半年で完成しました。台地の縁に沿って東西二本の水路を掘り、低地の中央に位置する芝川を排水路とします。東西の水路を結ぶ運河(見沼通船堀)を設置することで、芝川を水運のルートとしても使えるようにしました。パナマ運河と同じ構造(閘門式運河)でそれよりも180年以上前に実現した「見沼通船堀」や水路の立体交差「伏せ越し」「掛け樋」など当時の技術力の高さが分かる遺構も見どころです。
こうして東京湾→低地→ため池→田んぼ、と姿を変えた見沼エリア。現在は、広大な田んぼも残りますが、畑や植木畑が多くなっています。また、その地形を利用し、更に掘りこんだ「遊水地」も多数あり、治水上の観点からも宅地化は抑制され、広大な緑地が確保されることになった訳です。
首都圏に残された広大な緑地、見沼田んぼは四季折々に魅力的な姿を見せてくれます。その魅力を、その時を逃さずに見られるよう計画された「三木散歩」。見沼田んぼを知り、これからもかけがえのない環境資産として次の世代に引き継いでいくためにも、「三木散歩」はぴったりだな、という感を強く持ちました。講師の鮫島さん、ありがとうございました。
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