開催月日:2022年12月20日(火)13:30~15:30の予定(13:00~受付開始)
講師:大舘一夫さん(埼玉県きのこ研究会 副会長、キノコ入門講座 代表)
場所:板橋区ハイライフプラザ
定員:30名
受講料:700円(当日受付でお支払いください)
講師の大舘さんは「キノコ入門講座」の代表を務めるキノコ博士。前回は2019年の9月にお話ししていただきました。専門的な内容を易しく伝えてくださる語り口が好評で、今回PART2が実現しました。
実は大舘さんへのオファーは以前から続けていましたが、先生自身の体調の関係で延び延びになっていたのです。この夏の「カエンタケ騒動」で報道番組にご登場の大舘先生の雄姿に触れ、復活を知って講座が実現した、という裏話もあります。
お話は前回の復習から。「キノコ」はキノコを構成する菌糸そのもので、キノコの本体。「きのこ」は地上などに現れたキノコの花、だそうです。キノコなどの菌類は光合成により有機物を作り出す「生産者」としての「植物」、それを摂取する「消費者」としての「動物」と並ぶ、「分解者」としての存在で、それにより「第三の生物」としても認識されるそうです。キノコの「分解者」としての働きがなければ、地球のリサイクルシステムは機能していなかったはずで、キノコの世界の奥深さが実感できます。
お話は「きのこの観察」へ。きのこはその特徴から8つの群に分類されます。分類群の階級は異なりますが、チャワンタケ類、キクラゲ類、スッポンタケ類、サルノコシカケ類、アンズタケ類、ベニタケ類、イグチ類、ハラタケ類の8群です。きのこの観察は、きのこ(子実体)の観察がメインで、本体の菌糸を観察するとなると顕微鏡が必要となります。従って、フィールドでは「きのこ」の観察が中心となります。
きのこを観察し、そのキノコを「同定」することを目指しますが、国内には推定10000種のキノコが存在し、その大半が品種確定していないという現状から「キノコの同定」は難しい作業です。フィールドではまず、発生状況の観察をします。観察時期やその時の気候、発生場所の植生、地質、発生位置、発生の仕方などの条件で分類群が絞られてくることは想像できます。「マツタケはアカマツ林」は周知の事実です。次にきのこの形状や肉質、胞子の付き方の特徴や胞子紋などを「肉眼観察」し、上記8群のどこに入るか、考えていきます。
「ゼラチン質はキクラゲ類」などのわかりやすい特徴もありますが、ここでは8群の内、ハラタケ類について詳しい解説がありました。きのこの姿を観察し、どの群に入るのかを決めていくわけですが、傘や柄、ヒダなどそれぞれの特徴を見ていきます。傘だけとっても、その大きさや縁の形状、色、表面の様子、などに着目し、さらに柄の形や太さ、その他のパーツの特徴を複合的に観察して同定していきます。傘の裏のヒダに至っては幅や厚さ、疎密具合、色、形状、柄との接し方などこれでもかというぐらいのチェック項目があり、更に肉質や味(少しかじってみるそうです)においなど五感をフル活動させて同定していきます。安易に採ったりもらったり、図鑑一冊で決めつけたりがいかに危険か、思い知りました。
「中毒ご三家」や「猛毒ご三家」の紹介もありました。ツキヨタケやカキシメジ、クサウラベニタケが有名で、カキシメジ中毒は大舘先生ご自身も経験があり、一日で6kgも体重が減ったそうです。この夏、話題になった「カエンタケ」に至っては「トリコテセン」というたんぱく質合成を阻害する物質を含み、その致死量は青酸カリの比ではなく、わずか30mgとのこと、猛毒王って感じがしました。
最後にきのこ中毒を避けるお話がありました。「縦に裂けるものは大丈夫」「地味な色は食べられる」などの言い伝えは信用しない。毒キノコを見分ける方法はなく、食べられるキノコと毒キノコの実物を繰り返し見て覚えていくしかない。それでも素人判断はせず、詳しい人に見てもらう。道の駅や直売所で買った野生キノコも信用しない、などのお話がありました。
聞けば聞くほど奥深いキノコの世界。PART3の開催もお願いし、充実した時間を終えました。講師の大舘先生、ありがとうございました。
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