お山の教室

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「お山の教室」第111回
『お遍路の今とお接待とは、なぜお四国病にかかるのか?』

開催月日:2021年9月28日(火)13:30~15:30の予定(13:00~受付開始)
講師:数見 直さん(新ハイキングクラブ会長・四国88カ所霊場公認権中先達)
場所:板橋区ハイライフプラザ
定員:15名
受講料:700円(当日受付でお支払いください)

 

主な内容

2019年11月に「四国88カ所お遍路の旅」と題して講演した続編です。歩き遍路で10週を超えた先達が、お遍路の今、お接待文化、遍路道での出会いを深掘りし、なぜ「お四国病」にかかる人が後を絶たないのかを楽しくお話しします。皆さんの接待経験もご紹介ください。

 

レポート

講座の様子 講座の様子

今回は2019年に続き、(今年から新ハイキングクラブ会長に就任した)数見さんに講師をお願いし、四国のお遍路さんの魅力についてお話していただきました。数見さんは現在「権中先達」(ごんちゅうせんだつ)として新ハイのお遍路山行を企画し、それ以外でもお遍路の普及活動に尽力されています。お遍路を始めてから8年。その間に、一周すると1200kmという歩き遍路を10回、達成されています。今回は特にお遍路に特有の「お接待」の文化を知ることで「異次元の世界、四国」の魅力を感じることができました。

お話は15年前と現在(2018年)のデータ比較から入りました。お遍路に出かける人は、15年前は60代以上が8割近くを占めていましたが、現在は5割になり、30~40代が増加しています。若返り傾向に反して、移動手段は自家用車が増え、歩き遍路は15年前から半減し6%となりました。歩き遍路の人に限ってみると、通し(八十八か所を歩き通す)は15年前33%だったものが今は9%となりました。 一回り1200kmを通しで歩くのは易しいものではありません。「早い人は40日ほどで回ります」とのことなので、単純に考えても毎日30kmを歩き続ける必要があります。そうなると、現実的には新ハイのお遍路山行のように10日ほどを一区切りにし、日を改めて繋いでいくやり方が現実的です。

次に今回のメインテーマ、お接待についての説明がありました。お接待とは「四国遍路をする人に対して、無償で、お遍路さんの利益になるように自発的に物品・金銭・行為(労苦)・宿泊等を提供する慣習」です。未経験の身にはなかなかイメージしにくいのですが、お遍路さんと認識されると、突然「お接待させてください」の声とともに、ごく自然なふるまいで様々なものが差し出されるそうです。

お接待は『喜捨』の文化で、それは「喜んで寄付する」の意味があります。お接待する側はどちらかと言うと高齢者が多いものの、「お遍路さんにお接待渡してきて」と子どもの時から経験し、自然に成長した人達も多く、こんな人たちがお接待を支えています。お接待は遠慮せず受けるのが原則で、お接待をすることで接待者は自分の思いをお遍路さんに託す、という意味合いもあります。「お接待は受ける」の考えで、歩き遍路の方が自家用車同乗のお接待を受け、断り切れずに乗せてもらった後、また乗車地点まで歩いて戻る、という驚きの実話も披露されました。また、お遍路さんは時には接待者の話し相手や相談役にもなり、更に、連日長距離を歩き続け、無駄なものが削ぎ落されたお遍路さんの歩き姿にお大師さまの影を見出して、お遍路さんに合掌する方もいるそうです。

お大師さまと同行二人、お接待や遍路仲間との出会いに感謝の気持ちを忘れず、四国の豊かな自然と一体化し、頭を空っぽにして歩き、お参りし、しっかり食べてぐっすり眠る。そんな毎日を繰り返すことで自分のなかに眠っていた自然治癒力が目覚め、五感が研ぎ澄まされていく。四国お遍路は本来の自分自身に出会う、かけがえのない日々で、『お四国病』に感染する人の気持ちが理解できる講演会でした。

講師の数見さん、ありがとうございました。

なお、来年は四国お遍路の魅力的な区間、厳しい区間など個性際立つルートを従来より短期間(五日間程度)で体験する山行を計画するとのこと、ご期待ください。

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