お山の教室

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「お山の教室」第103回
『山の樹を知ろう』

緊急事態宣言のため3月24日の板橋区ハイライフプラザから、2月24日のリモートでの開催に変更しました

開催月日:2021年2月24日(水)13:30~15:30の予定(13:00~受付開始)
講師:近藤雅幸さん(新ハイキングクラブ・山行リーダー)
場所:リモート(Zoomを利用)
定員:30名(参加者:12名)
受講料:700円(当日受付でお支払いください)

 

主な内容

国土の7割が山岳・丘陵地帯という日本に暮らす私たちハイカーは、自然からの恩恵を多分に受けた生活をしています。森林も国土の6割を占め、「森林浴」や新緑、木陰、紅葉といった山の醍醐味を満喫できるのも森林のおかげです。その「森林」の構成メンバーの「樹木」について、私たちはどれくらいの知識を持っているでしょうか。山行のたびにお世話になる「樹木」についてもっと知り、敬意をもって接することも私たちハイカーの務めのように思います。今回は地図読み講座でおなじみ、近藤雅幸さんに山の樹木のお話しをたっぷりと語っていただきます。お申込みはお早めに。

①山の樹のお話
緯度、高度、地質、気象などに対応した山の樹たちの生活や、樹とほかの生き物との関わり、人の生活と樹など、幅広くお話しします。
②質疑応答

 

レポート

講師の近藤さんは「地図読みの先生」としておなじみですが、大学時代は森林生態学を専攻した樹木の専門家でもあります。本来ならば2月の「お山の教室」は上高地の魅力についての内容を計画していましたが、コロナ禍の影響で延期となり、急遽、2月発送の3月号に近藤さんの「山の樹を知ろう」も併記して募集をかけました。リモートでの講座で募集期間も短かったのですが、10名以上の方がWeb上でお顔を合わせてくださいました。あらかじめ受け取ってあったテキストを開き、パソコンに向かって講演開始です。

まずは「木々の集合体である森を見、なぜその樹がそこにあるのかを理解することで、森という環境とその構成員の樹木、両者の理解を深める」という基本的なスタンスが示されました。

講座は植物の分類から。我々の世代だと、反射的に「植物分類学の父・リンネ」とか牧野富太郎による分類が思い浮かびます。しかし、近年は分子系統学が大きく発展し、従来の「形が近いものを近縁種とするクロンキスト分類」から「DNA解析をメインにしたAPG分類」が主流になってきたそう。(既にかなり難解!)例えば「カエデ科」はなくなってカエデは「ムクロジ科」に入るそう。なんだかウサギ小屋にキリンを入れるような感じがしました。

「植物の生命維持に必要な条件」や「裸子植物と被子植物」のお話はまさに小中学校の理科の時間。生徒に戻った気がします。ここでは「肥料」でなく「14種類のミネラル」という表現がちょっぴり専門的。「常緑樹と落葉樹」のお話では「落葉は寒冷時に水分不足で枯れてしまわないための防衛策」という説明があり、なるほど!と思いました。

話はブナ科の樹木から、いよいよ具体的になります。山の自然林で一番良く見かけるのがブナ科の樹木で、日本には5属23種が分布しているそうです。ブナ科と聞くとブナが思い浮かんだまま一時停止してしまいますが、ドングリやクリのように殻斗(クリのイガやドングリの帽子)が発達した果実を持つものは全てブナ科に入ります。クリ、シイ、カシ、ナラの類ですから、近所の雑木林はブナ科だらけです。「ブナの樹には短期発芽型の実をつくるもの(ナラなど)と長期発芽型のもの(ブナ、シイなど)がある」というお話やブナの結実の多寡のお話も興味深かったです。ブナの実りはクマなどの生態に影響しますから、私たちにとっても関心事なのですが、単に気象条件のみに左右されるわけではなく「種を実らせる」ことは樹木にとって大変なエネルギーを必要とする営みなので、そう簡単に毎年豊作とはいかないんだな、と納得しました。

「植生遷移と極相」の話では生育環境の縦軸に温度、横軸にストレスが組まれた図が示され、今まで植生に「ストレス」という指針を意識したことがなかったので、新鮮な驚きでした。

樹木のすみわけや見分け方についてのお話もありました。「アベマキとクヌギは似ているが葉の裏が白いのがアベマキ」「ブナとミズナラは同じ山に分布するが、残雪の深さに左右され、北側はブナ林、南側はミズナラ林になっていることが多い」など、具体的なお話がたくさん聞けました。

これからはハイキングだけでなく、雑木林の散歩や公園歩きでもそこの樹木と会話をし、樹木の性質と生育環境を総合した見方ができるようになりたいなと感じた講演会でした。

講師の近藤さん、ありがとうございました。

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