開催月日:2020年9月23日(水)13:30~15:30
講師:山田隆彦さん(『日本のスミレ探訪72選』著者)
場所:滝野川西区民センター(ふれあい館)
参加者:15名
受講料:700円(当日受付でお支払いください)
今回の講師、山田隆彦さん(日本植物友の会副会長)は、かつて新ハイキング誌に「ハイキングで出合う万葉の草花」や「ハイキング花ノート」を連載され、クラブの植物観察山行でも講師をお願いした、植物学の第一人者です。昨年、『日本のスミレ探訪72選』を上梓され(新ハイキングクラブ5月号で紹介)たように、スミレの専門家でもあります。日本に生育する約220種類のスミレのうち、167種を訪ね歩いた山田さんにスミレの魅力をたっぷりと語っていただきます。
1 スミレとはどんな植物か
2 スミレの魅力
3 日本のスミレ探訪記
4 スミレの将来
5 質疑応答
講師の山田さんは、新ハイ誌で「ハイキングで出合う万葉の草花」や「ハイキング花ノート」を連載され、植物観察山行の講師も務められていた植物の専門家で、「お山の教室」講師をお願いするのも2回目です。前回(2014年)は、野山に咲く花全般がテーマでしたが今回は(毎年著作を発表されている中でも)スミレに限定した著作を複数出されている日本のスミレ、第一人者にスミレのお話をしていただく、ということで力の入り具合が違います。
事前にテキストを送っていただきましたが、スミレの分類や特徴など専門的な内容がびっしり記載されていて、正直、「ついていけるかな…」と心配になりました。
しかし、始まってしまえばその不安は消え、先生の「スミレ愛」の世界に気持ちよく漂うことになりました。先生のスミレに対する想いが「スミレノート」に詰まっていましたが、その内容は多岐にわたり、短歌、俳句、文学、音楽、演劇、工芸など様々です。冒頭で紹介していただいた、漱石の「菫ほど小さき人に生まれたし」は自分の生き方を反省させられたし、ナポレオンとスミレにまつわる逸話は全く知らなかった世界の扉を開けてくれました。宝塚とスミレや、先生ご自身の身の回りの品々の紹介(食器、ワイン、ラーメンまで、すべてスミレにまつわるもの)では、スミレ一途の想いがひしひしと伝わり、こちらまで幸せな気分になりました。
「スミレ」の語源のひとつに大工さんの使う「墨入れ」があることは知られていますが、英語のスミレ(violet)と暴力(violence)が紫色の痣つながりであることにはびっくりしました。
日本のスミレを紹介する時間はさらに力が入ります。北海道から沖縄まで、スミレを求めて日本全土を歩いた先生ですから、スミレの特長と生息地、出合うまでのエピソードなど、時間はいくらあっても足りません。日本には大きく分けて60種のスミレがあり、細かく分けると200種を超えるそうですが、それを13のグループに分類して説明してくださいました。まずはキスミレのグループから。個人的には初めて見た黄色いスミレが北アルプスのキバナノコマノツメだったので黄色いスミレはみんな同じグループだろうと思っていましたが、キスミレ類とキバナノコマノツメ類は別物だそうです。高山に行かなくても結構黄色いスミレは見られることを知りました。そのほか、ニオイスミレとニョイスミレは別物で、ニョイスミレの「ニョイ」は「如意棒」の「如」だとか、ヒグマに怯えながらシレトコスミレに会いに行くときのエピソードなど、次々に披露されていきました。
先生が一番好きなのは(新婚旅行の予定地をハワイから変更してまで見に行った)新潟のイソスミレだそうで、その群落の画像を拝見したら、上品な瑠璃色で、「見てみたい!」と強く思いました。奥深いだろうなとは思っていましたが、スミレの世界はこんなにも豊かなものだったんだ、ひとつのことを深く探究する、というのは素敵なことだと改めて感じました。
あふれるスミレ愛で参加者をスミレ色の世界に誘ってくださった講師の山田先生、どうもありがとうございました。