開催月日:2019年10月24日(木)13:30~15:30
講師:近藤雅幸さん(新ハイキングクラブ山行リーダー)
場所:北区立滝野川西区民センター(滝野川西ふれあい館)
参加者:20名
受講料: 700円
① ヤブ山の魅力とは
② ヤブ山を歩くための資質
③ 首都圏のヤブ山・山域紹介
④ 質疑応答
今回は新ハイキングクラブ・山行リーダーで、「地図の先生」として「お山の教室」に度々登場されている、近藤雅幸さんをお迎えしました。地図読み山行の達人ということは、ヤブ山大好きか、と思いきや、実は好きなのはヤブ山でなく『ヤブのない、人のいない山』だそうです。
近藤さんとヤブとの出合いは中学時代の山岳部の活動だそうです。当時、丹沢などの沢登りによく出かけていたそうですが、沢のツメはたいていヤブ。そこでヤブは身近なものとなりました。高校の山岳部では、リーダー学年になった際、それまでの北アルプスなどの山域でなく、白毛門から入山し、上越国境の山々をテント縦走したそうです。そのころから「人と違う山登り」というスタイルができてきたと語ってくれました。
ヤブ山の魅力は「パイオニアワーク」の精神を実現できるところにあるそうです。自分で設定したルートを自己責任で踏破した充実感が魅力のようです。また、人と出会わないこともヤブ山の魅力です。そんな自分だけの静かな山では、秘密の場所を見つけることもあるそうで、秋には真っ赤になるモミジの純林や自分たちだけのお花見スポットなどを見つけたお話がありました。また、地図読みをしながらルートを決めていく時間も、謎解きをしているようで楽しいそうです。思いもしない発見や野生動物との出合いもヤブ山の魅力だそうです。
しかし、だれでもヤブに踏み込めるわけではありません。ヤブ山歩きの資質として、先ず必要なのは読図能力です。道迷いに準ずる行為を自ら選択するわけですから、いつでも地図上に現在地を特定でき、これから進むべき方角を示せる能力が要求されます。正しいルートファインディングをしていても、実際には地図上には表現しきれない地形も次々現れます。近藤さんはあらかじめ地図を読み、岩場が予想されるルートにはロープを持参するそうです。装備面でもロープの他にツェルトを持参するとか、家族に行先を具体的に伝えておくことも大切です。
東京近郊でヤブを楽しめる山域の紹介もありました。まずは、小鹿野周辺の秩父盆地西側の山域。釜の沢五峰はよく登られていますが、そこからの尾根続き、とくに一つ西側の尾根は人気がなく、仮に迷ったとしても1時間で人里に着けるのも魅力です。
次は甲府の南、芦川周辺の山域。釈迦ヶ岳はポピュラーですが、その西側の尾根が魅力的なヤブ山だそうです。
本格派におススメなのが白根南嶺。日本アルプスの中にあって、唯一残された道のない2700m超の尾根が白根南嶺で、小屋も水場もなく、入山には幕営道具一式と少なくとも5リットルの水を担ぐ体力も必要です。
奥秩父の信州側の山域も魅力的です。カラマツの新緑と黄葉が魅力の場所で、最近は新ハイの山行でも紹介されることがあり、笠無・チョキ・魔子・兎藪・夕日アタリなど独特な地名が点在するエリアです。
首都圏から近い西上州もヤブ山好きの聖地で、山の魅力がぎゅっと詰まった山域だそうです。アプローチが短く、好展望の山が多いのですが、どの山も岩とヤブのミックスなのでそれらに対するスキルは必要となります。上信越自動車道から間近に仰ぐ高岩山や谷急山も見た目ほどは難しくない、という説明もありました。
ご自身の山歴からヤブ山の魅力、更に具体的な山や山域の紹介まであって、一般ルートとは違うヤブ山の魅力をとてもよく理解できた講演会でした。
講師の近藤さん、ありがとうございました。