開催月日:2019年8月20日(火)13:30~15:30
講師:中村雅雄さん(スズメバチ研究家)
場所:板橋区ハイライフプラザ
定員:20名
受講料: 500円
① スズメバチはどんなハチか
② スズメバチは増えているのか
③ 都会のスズメバチ
④ スズメバチの種類
⑤ 遭遇時の注意
⑥ 質疑応答
今回は川崎で小学校の先生をしながらスズメバチ研究に打ち込み、100回以上も刺されながらその生態を明らかにしていったスズメバチ研究家、中村雅雄さんをお迎えしました。中村さんは、多数の著書をお持ちでテレビ出演の依頼も多い、スズメバチ研究の第一人者です。
新ハイキングの山行は参加人数の割に事故(ケガ)が大変少ないことが特徴です。毎年8000名程の山行参加者がいますが、保険金の支払い対象となる事故は例年10件前後の発生でとどまっています。2年前になりますが、2017年の支払い対象事故10件の内、2件がハチ被害であり、このことからも現実的な対処法を知っておかなくてはならないと思います。
講師の中村さんは画像資料だけでなく、スズメバチの標本箱やいろいろなレプリカ、本物の巣まで用意してくださり、それらをズラリと並べてのお話となりました。
まずは、スズメバチの生態についてお話がありました。「秋口が危ない」ということはハイカーには知られていますが、実際には5月ごろからその年のコロニー作成が開始されます。最初は女王バチ一匹で巣作りから産卵、狩り、子育てを行いますが、働きバチ(すべてメスです)が増えるにつれ産卵に専念し、巣も拡大し、時には1000匹を超える大コロニーを作り上げます。その勢力拡大の過程で、その年の気象条件や営巣地の環境、外敵の存在などイレギュラーな刺激にその都度、適応していく知性あふれるたくましい生命体としてコロニーは成長し機能します。その生き残り戦略は実に巧妙で統制のとれた、時には冷徹なほどの合理性は知れば知るほど感心させられます。
恐怖の対象のオオスズメバチですが、最近、郊外で大発生することのあるキイロスズメバチの個体数抑制にも一役買っているというお話もありました。先生のスズメバチ愛は熱く、海外のハチとの出合いについても詳しく説明してくださいました。
最後に大切な対処法についてのお話です。スズメバチの攻撃には3つのステップがあるそうです。
まずは警戒。巣から出てきて外の様子を伺います。
次に威嚇。外敵と認識すれば、大あごをカチカチ鳴らしながらその周囲を飛び回り、毒液のスプレーをまき散らします。これはテリトリーの主張でもあり、毒液噴射は他のハチたちの攻撃性を高める効果もあります。
最後は攻撃。動くもの、黒っぽいもの、毛髪に飛来し毒針を刺しにきます。対処法としては、巣の存在に気づき、刺激しないことが第一ですが木の根元など目立たないところに営巣していることが多いため、なかなか気づきません。黒っぽい服装や刺激性の香料は避け、パトロールのハチの威嚇に気づいたらなるべく身を低くして速やかにその場を離れることが大切なようです。
その際に役立つのが木酢液だそうです。木酢液は自然界では最大の危機である山火事を再現させ、それをかけられたスズメバチは攻撃性が明らかに弱まるそうです。アナフィキラシーやアレルギー体質等で切実な方はポイズンリムーバーと共に木酢液の携行もおすすめです。
また、不幸にして刺されてしまった時は(ハチ毒は水溶性なので)毒を絞り出しながら大量の水で洗い流すことが有効だそうです。また、(口内に傷がある場合のことを考え)おすすめはできませんが口で吸い出す場合も予め口に水を含んで吸い出し、即吐き出すようにすればポイズンリムーバーの効果があるそうです。
講演が終わったあと、参加者の皆さんは中村先生の周囲に集まり、貴重な標本や巣を間近で見て感心していました。 充実の時間をご提供くださった中村雅雄さん、ありがとうございました。