開催月日:2018年9月28日(金)13:30~15:30
講師:皆川典久さん(東京スリバチ学会会長)
場所:板橋区ハイライフプラザ
定員:-
今回は『東京のスリバチ地形散歩』などの著作で知られる東京スリバチ学会会長、皆川典久さんを講師としてお招きしました。武蔵野台地と荒川低地にまたがる形で発展してきた江戸/東京には、台地が浸食され、谷となり三方向(あるいは四方)を斜面に囲まれた地形が多く存在します。そのような場所を訪ね歩き、歴史の痕跡を留める地形を観察しつつ現在までの土地利用と照らしながら都会の変貌について考察していこうとするのが「スリバチ学会」です。新しいフィールドワークの視点を手に入れれば、街歩きがまたワンランクアップすることでしょう。どうぞお楽しみに!
「スリバチ」とは、台地に刻まれた谷や窪地などの凹んだ地形のことです。その形がすり鉢に似ているとしてつけられました。
「山の手」と呼ばれる東京の都心部には坂が多く、ここが起伏に富んだ土地だということはよく知られています。しかし、その坂の多くが上り坂と下り坂が向かい合うことはあまり知られていなません。例えば、渋谷では駅を挟んで宮益坂と道玄坂が東西に向かい合っているし、谷中では不忍通りを挟んで団子坂と三崎坂が相対しています。渋谷・谷中という二つの地名には「谷」という文字が含まれていますが、他にも、四ツ谷、市ヶ谷、千駄ヶ谷、幡ヶ谷、茗荷谷など、東京には「谷」と付く地名が意外にも多くあります。
武蔵野台地の東端部に位置する東京都心部には、山間部のようなV字状の凸凹地形ではなく、平らな台地面から突然、急峻な崖が落ち込み、谷底は平坦になるというU字状の谷が多く刻まれているのが特徴です。武蔵野台地は関東ローム層と呼ばれる火山灰が風化した赤土で覆われていますが、透水性の高い関東ローム層は、水を含むと崩れやすいため、浸食面は急峻な断崖状となりやすく、谷はU字状をつくると言われています。
東京の町は江戸の町を下敷きにしていると言われていますが、主要な道路や敷地割りは江戸期の町の骨格を踏襲していますし、神社や仏閣などの位置も基本的には変わっていません。その江戸の町は、地形の特徴を活かしながら築かれた計画的な町であったといわれています。
大名庭園だった場所は都内にたくさんあります。たとえば港区の有栖川公園とか池田山公園。その他、新宿御苑や明治神宮もそうです。江戸時代、大名庭園だったところは、スリバチ状の谷をいかし、湧き出る水を利用して池をつくり、回遊式の庭園にした、いわば江戸時代の遺構が現代都市東京に残っているわけです。大名屋敷は、将軍や他の大名を接待するための場だったのですが、そういう「おもてなし」の場が東京にはたくさん用意されていました。
以上、「スライド」を写しながら解説していただきました。
東京「スリバチ」地形散歩 皆川典久著 本体2200円+税 ISBN 978-4-86248-823-7
東京「スリバチ」地形散歩2 皆川典久著 本体2200円+税 ISBN 978-4-8003-0230-4
東京「スリバチ」多摩・武蔵野編 皆川典久著 真貝康之著本体2200円+税 ISBN 978-4-8003-1386-7
発行所 株式会社洋泉社(東京都千代田区神田錦町)