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「お山の教室」第87回
『キノコ入門〜キノコとはどんな生き物か〜』

開催月日:2019年9月17日(火)13:30~15:30の予定(13:00~受付開始)
講師:大館一夫さん(キノコ入門講座代表)
場所:北区立滝野川西区民センター(滝野川西ふれあい館)
参加者:23名
受講料: 500円

 

主な内容

① きのこは花
② キノコの本体は菌糸
③ キノコの生き方は分解
④ キノコは第三の生物
⑤ キノコ入門講座について
⑥ 質疑応答

 

レポート

講座の様子

今回はキノコ入門講座代表で多数のテレビ出演もされているキノコ研究家の大舘さんに、知っているようで実はわからないことのほうが多い、キノコの世界の入り口を案内していただきました。いつもの会場、板橋ハイライフプラザが改装工事中のため、板橋駅から徒歩10分の北区滝野川西ふれあい館を会場にしましたが、皆さん、迷わずに街歩きを楽しんで到着したようで、まずはほっとしました。

大舘さんが用意してくださった資料は6枚。どれも専門用語が並び、それを手にした学者の風貌の大舘さんと向き合うと「ついていけるだろうか…」と不安がよぎります。でも、心配は無用でした。

まずは「きのこ」と「キノコ」から。私たちがふだん、目にしたり食べたりしているキノコは実はキノコの花に当たる部位で「きのこ」とひらがなで書くそうです。普通の植物の根・茎・葉に当たる部分は菌糸で、そちらがキノコの本体になり、「キノコ」と表記はカタカナになります。「きのこ」は花ですが、茎も葉もないため時には怪しい印象も持たれます。本体の菌糸は細長い形状で、それを生かし、狭い隙間に侵入し広範囲にその網目を広げ、体積に比べて広大な表面積を獲得して他の生物から養分を摂取して生息域を拡大していきます。地中や朽木に菌糸を張り巡らせ、更に生息域を拡大するために地表に押し出したのが「きのこ」で、その役目は「食べられて胞子を散布する」ことにあります。胞子が適地に確実に着地できるよう、きのこは「おいしくなるように努力」しているそうで、それが「きのこはおいしい」理由だそうです。食べられるという戦略を取ったきのこに毒をもつものがある、というのはキノコ界最大の謎だそうです。

ここで、毒キノコによる中毒事故の大部分を占める「中毒御三家」=ツキヨタケ・カキシメジ・クサウラベニタケのお話がありました。とりあえずは、いかにも食べられそうなこの三種を覚え、誘惑に乗らないことが大切だそうです。 次に「猛毒御三家」=ドクツルタケ・シロタマゴテングタケ・タマゴテングタケのお話がありました。これらは中毒どころの騒ぎではなく、内臓の細胞を直接破壊する、きわめて危険な毒性で、絶対に手を出したらだめだそうです。

毒キノコの中毒にあわないためにはどうしたらよいかのお話もありました。「縦に裂ければ大丈夫」「地味なきのこは無毒」「虫食いがあるのは食べられる」「ナスと一緒に煮ればOK」などの言い伝えは全て迷信で、毒キノコを見分ける方法はないそうです。確実な知識を持つ人と、現地で複数回、実物を手にして一種類ずつ覚えていくしかありません。素人が図鑑で判定したり、素人からおすそ分けしてもらった、更には街道沿いにある野生きのこの直売にも危険が潜んでいます。キノコを40年以上研究されている大舘さんをして「私がキノコを語るのは、ちびまるこちゃんが人生を語るのに等しい」と言わしめるほどの奥深い世界なのです。

菌糸の説明で、キノコは他の生物から養分を摂取する「従属栄養」の話がありました。自分では養分を作らず、周囲の有機物を無機物に分解しながら生息範囲を拡大している、というキノコの生き方にキノコの本質があるように思いました。キノコは有機物を分解することでエネルギーを得ますが、キノコが分解した結果の無機物が次は(光合成の機能を持つ)植物の有機物生産の原料となり、それで自然界の物質のリサイクルシステムが成立しています。キノコや菌類は「森の掃除屋さん」ですが、その存在は実に大きいのです。

キノコをはじめとした菌類は、有機物の「生産者」である植物やその「消費者」である動物とは別の役割の「分解者」として「第三の生物」と位置付けることができます。この栄養摂取の方法だけでなく体制、生殖のどちらも動植物とは別物なので「生物は動物と植物」という「生物二界説」より菌類を加えた「生物三界説」の方がより実態に近いことが納得できました。

日本に生息するキノコは推定で10000種あり、そのうち名前の付いているものは3割。その3000種の内、食べられるものは200、完全に毒の判定がついているものが100、その他はわからないそうです。それを聞くと、野生キノコに手を出す行為はよほどの裏付けがなければダメ、という結論になりそうです。

「どれが食べられるか」「どういったところに行けば採れるか」「どういうキノコは採っちゃだめか」程度のスタンスで臨んだ講演会でしたが、キノコの存在や自然界での役割、生態を知り、期せずしてキノコの世界の本質に触れて食欲よりも知識欲が触発された講演会でした。専門的な世界に易しい言葉で導いてくださった今回の講演は、参加者からパートⅡの要望も出される充実した時間でした。

講師の大舘さん、ありがとうございました。

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